なすぺんブログなすぺんこと那須洋美の徒然日記です♪

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE |


酒と電車と男と女 01:07
 ほろほろにほろ酔いのあたし。
 金曜日の終電は流石に混むなあと思い乍ら、ドア際に何とか乗り込む。

 でも本当に、よく呑めるようになった。

 思えば、鍛えれば呑めるようになるんじゃないかと呑んで吐いてを繰り返した頃があった。
 でも一向に強くならず、カクテルを上から3センチも呑めば真っ赤になり、身体中が血管になったかのように血が巡り、それ以上呑むと吐くという有様だった。
 30歳も近くなって、もうあたしは酒を分解出来ないんだとすっかり諦めていたところだった。

 今年に入って急に、5杯も6杯も呑めるようになったのはどうしてか。

 今日も、顔色も変わらず気分よく電車に乗り込んだ。


 しかし、そのいい気分は長くは続かなかった。
 電車が池袋駅を発車してすぐ、あたしは痴漢にあった。
 骨張った大きな手で左手を握られたのだ。
 電車の中で手を握ってくる輩がたまにいるが、彼らは何を求めているのだろうか。
 あたしはすぐにその手を振り払った。
 するとその手は、またあたしの手を握り返して来るではないか。
 今時命知らずな、大胆な痴漢だ。
 痴漢の総数は、最近減ったような気がしている。
 冤罪も含め、検挙されたニュースが相次いだからだろう。
 振り払ってもなお握り返して来るような骨のある(?)痴漢には久しくお目にかかっていない。
 あたしは断固戦う気持ちで再度、強くその手を振り払った。
 男は諦めたのか、あたしの手を握り返しては来なかった。


 それにしても折角のほろほろ気分を返して欲しい。
 人の掌は好きだし、手を繋ぐのは大好きだが、見知らぬ人の掌となるとそのあたたかさがそのまま気持ち悪く感じられる。
 手、ちゃんと洗ってるヤツかなあ、と考えたら嫌な気分になった。


「……なあ」

 不意に、あたしの斜め前にいる若い男が声を発した。

「何」

 あたしの前にいる若い女が男の顔を見た。

「まだ怒ってんのかよ」
「別に」

 痴話喧嘩のようだ。
 人口密度に反して静まりかえった車両の中で、彼らは乗客の注目を集めている。
 電車の中の人間模様は実に興味深いものだなあと思い乍ら、あたしはその二人が見つめ合うさまを伺っていた。

「怒ってんだろ」
「怒ってないってば」
「じゃあなんで逃げんだよ」

 カップルの会話に気をとられていたあたしの左手を、また痴漢がぎゅっと握った。
 痴漢?

 あたしはその手を振り払わず、ゆっくり静かに肩の位置まであげてみた。

 黙る男。
 黙る女。
 黙るあたし。


 若い男はあたしの手を離した。
 あたしはどうにも気まずいその車両を降りた。
 池袋から近くてよかった。
 あのままもう1駅とか、無理だった。


 彼は、今度はちゃんと彼女の手を握れただろうか。


※クリックで投票してね。励みになります♪↓

0
    | ちょっと面白い話 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by なすぺん(那須洋美)

    Comment








    Trackback
    この記事のトラックバックURL: http://diary.nasupen.com/trackback/1040600
    << NEW | TOP | OLD>>